タカやワシ、ハヤブサ、フクロウは「猛禽類」と呼ばれます。
この呼び方を見て、私は「スズメやペンギンが入る鳥類とは、別のグループなのかな」と引っかかりました。
答えは、思っていたより単純です。
猛禽類も、すべて鳥類です。
ただし、ここで終わるともう一つ勘違いが残ります。鳥類の中に「猛禽目」や「猛禽科」という一つの正式な分類があり、その下にタカやフクロウが並んでいるわけではありません。
鳥類は分類上の大きなグループ。猛禽類は、別々の分類にいる鳥をまたいで使われる呼び名です。

猛禽類という名前があるなら、「猛禽目」もあると思っていました。
鳥類と猛禽類は、同じ段の言葉ではなかった
鳥類は、生物分類でいう鳥綱(Aves)です。タカもスズメもカラスもペンギンも、この大きな箱に入ります。
一方の猛禽類は、鳥綱・猛禽目・猛禽科という階段の一段ではありません。
日本鳥学会の『日本鳥類目録 改訂第8版』は、日本で確認された自然分布種を24の目に分けています。そこにはタカ目、ハヤブサ目、フクロウ目がありますが、「猛禽目」はありません。
文章だけだと似た名前が続くので、関係を図にしてみました。
タカもスズメもペンギンも入る大きな分類
タカ・ワシ・トビなど
ハヤブサなど
フクロウなど
三つは別々の「目」。点線の囲みが横断的な呼び名です
全部の目を覚える必要はなさそうです。
「鳥類」は箱の名前、「猛禽類」は箱の中の複数の枝にまたがる呼び名。
この違いだけ押さえると、かなり見通しがよくなります。
「猛禽類」は正式な分類名ではない。でも、適当な呼び方でもない
「正式な分類ではない」なら、単なる愛称なのか。ここで一度迷いました。
そういうわけでもありません。
猛禽類と呼ばれる鳥には、獲物を押さえる強い脚と鋭い爪、肉をちぎりやすい鉤形のくちばしなど、捕食に関わる共通点があります。分類上の近さとは別に、体のつくりや暮らし方に注目すると、一緒に扱う意味があるわけです。
環境省の野鳥調査資料でも、タカ目、フクロウ目、ハヤブサ目は分類表では別々に載りながら、鳥を捕食する鳥のまとまりとして扱われています。我孫子市鳥の博物館の企画展も、「猛禽」をタカ・フクロウ・ハヤブサという三つの目から紹介していました。
ただ、範囲を一本の線で固定するのは難しいようです。国土交通省関東地方整備局の用語集は、環境分野で「猛禽類」に明確な定義はないと説明しています。実務資料では調査対象をタカ科などに絞ることもあり、海外にも別の定義案があります。
だから「日本では必ずこの3目が猛禽類」と法律のように断言するより、一般にはタカ・ワシ類、ハヤブサ類、フクロウ類などを指すが、資料の目的によって範囲は少し動く、と捉えるのが正確です。
同じ猛禽類でも、タカとハヤブサは近い親戚ではない
日本でよく猛禽類と呼ばれる鳥を、現在の「目」で分けるとこうなります。

意外だったのはハヤブサです。
タカとハヤブサは、曲がったくちばしや鋭い爪を持ち、空から獲物を狙う姿も似ています。ところが現在の系統研究では、ハヤブサ目はタカ目よりも、オウム目やスズメ目を含む枝に近い側に置かれます。

同じ猛禽類で、姿も似ているのに、近い親戚とは限らないの?
遠い系統の生き物が、似た暮らしに適応して似た特徴を持つことがあります。収斂進化と呼ばれる現象です。
「猛禽類」は同じ祖先に近い鳥だけを集めた名前ではない。タカとハヤブサの関係を見ると、そのことが急に具体的になりました。
丸い顔のフクロウも、なぜ猛禽類?
フクロウはタカやワシほど「獲物を追う鳥」に見えないかもしれません。それでも猛禽類に含められるのは、捕食に使う体に共通点があるからです。
強い脚と爪で獲物をつかみ、曲がったくちばしで肉をちぎる。多くの種では暗い時間に獲物を見つける目や耳、静かに近づく羽も発達しています。
ただし、「フクロウは全部夜行性」「どの種も音を立てずに飛ぶ」とまで広げると外れます。昼に活動する種もいますし、狩り方や食べ物も同じではありません。
共通しているのは“フクロウらしい生活の全部”ではなく、捕食者としての体の一部です。
では、肉を食べる鳥は全部猛禽類なのか
ここまで読むと、カラスやカモメ、ペンギンも動物を食べるのだから、猛禽類ではないかという疑問が出ます。
でも、通常はそう呼びません。
ペンギンは魚を捕らえます。サギも魚やカエルを食べ、カラスやカモメも昆虫や小動物、死んだ動物を食べます。それでも猛禽類には含めないのが一般的です。
反対に、ハゲワシ類には腐肉を主に食べる種がいます。いつも生きた獲物を狩るわけではありませんが、タカ目の猛禽類です。
生きた獲物を捕らえる
猛禽類
魚などを捕らえる
通常は呼ばない
腐肉を主に食べる種も
猛禽類

肉を食べるかどうかだけで線を引くと、むしろ分からなくなりますね。
「肉を食べる鳥」と「猛禽類」は重なりますが、同じ意味ではありません。
食性だけでなく、獲物の扱い方、脚・爪・くちばしのつくり、分類上の系統、そして長く使われてきた呼び方が重なっています。「猛禽類=肉食鳥」は入り口としては分かりやすいものの、それだけではカラスとハゲワシの違いを説明できません。
違ったのは鳥そのものより、言葉の使われ方だった
最初は、猛禽類と鳥類が並ぶ別々の分類なのかと思っていました。
調べてみると、タカもハヤブサもフクロウも鳥類。ただし、三者は一つの「猛禽目」にまとまっているわけでもありませんでした。
覚えておくなら、この二つで十分です。
鳥類は、鳥全体を含む分類上の大きな箱。
猛禽類は、その箱の中の複数の枝へまたがる呼び名。
「普通の鳥」と「猛禽類」という二択ではなかったんですね。
そして次に気になったのは、カラスです。小動物も食べ、頭もよく、猛禽類を追い払うことまである。それでも、なぜカラスは猛禽類とは呼ばれないのでしょうか。

