薄口醤油は「味が薄い醤油」ではありません。濃口より色と香りが穏やかな一方、一般的な塩分は薄口の方が高めです。醤油の香りを生かすなら濃口、素材の色やだしを前に出すなら薄口を起点に、料理の完成像から選びましょう。
「薄口」という名前なので、私も最初は味や塩分まで薄いのだと思っていました。ところが調べると、薄いのは主に色。濃口と薄口は優劣ではなく、料理の何を残したいかで役割が変わります。この記事では、違いを覚えるだけで終わらず、煮物・お吸い物・炊き込みご飯・卓上でどちらを選ぶかまで整理します。

色が薄いなら、たくさん入れても薄味? 名前だけで判断すると、ここがいちばん迷いやすいところでした。
濃口醤油と薄口醤油の違いを早見表で比較
濃口は色・香り・用途の広さ、薄口は淡い色とだし・素材を生かす使い方が特徴です。塩分は商品の栄養成分表示によって変わりますが、一般的な目安では薄口の方が高めです。
| 比べる点 | 濃口醤油 | 薄口醤油 |
|---|---|---|
| 色 | 濃く、赤みのある褐色 | 淡く仕上げやすい |
| 香り | 醤油らしい香りを出しやすい | 香りが穏やかで、だしを生かしやすい |
| 塩分の一般的な目安 | 約16% | 約18% |
| 出荷量の目安 | 約84% | 約13% |
| 向く使い方 | 煮魚、照り焼き、炒め物、卓上 | お吸い物、炊き合わせ、茶碗蒸し、淡い煮物 |
| 選ぶ軸 | 醤油の色・香り・コクを生かす | 素材の色・だし・繊細な風味を生かす |
日本醤油協会によると、醤油はJASで濃口・薄口・たまり・再仕込・白の5種類に分類されます。濃口は調理用にも卓上用にも広く使われる最も一般的な種類で、薄口は関西で生まれた色の淡い醤油です。

薄口醤油は本当に味が薄い?
薄口の「薄い」は、味や塩分ではなく、主に色の淡さを表します。日本醤油協会が示す一般的な塩分は、濃口が約16%、薄口が約18%です。
そのため、薄口を使って料理を薄味にしたいときは「色がつかないから」と追加せず、味見しながら量を抑えることが大切です。商品によって食塩相当量は違うので、実際にはボトルの栄養成分表示を確認してください。
薄口醤油と減塩醤油は別の分類です。塩分を控えたい目的なら、「減塩」「うす塩」などの表示と食塩相当量を見ます。薄口という名前だけでは減塩になりません。
なぜ薄口醤油は色が淡い?
薄口醤油は、色が濃くなるのを抑えるように発酵・熟成を穏やかに進めます。日本醤油協会は、基本的な製法は濃口と同じですが、仕込み段階で食塩を約1割多く使い、発酵と熟成をゆるやかにすると説明しています。
色の違いは印象だけではありません。JASの色度では、数字が小さいほど濃く、大きいほど淡くなります。キッコーマンの解説では、濃口は原則18番未満、薄口は標準で18番以上、上級・特級で22番以上とされています。
ただし、薄口の原材料や甘味の付け方は商品によって違います。「薄口なら必ず同じ配合」と考えず、名称・原材料名・食塩相当量を見るのが確実です。

料理別・濃口醤油と薄口醤油の判断表
迷ったときは、「何料理だから」だけでなく完成した料理に何を残したいかで選びます。同じ煮物でも、濃口と薄口のどちらも正解になり得ます。
| 残したいもの・料理 | 選びやすい醤油 | 理由・注意点 |
|---|---|---|
| 醤油の香り、照り、濃い色 | 濃口 | 醤油らしい香りと色を出しやすい |
| 素材の色、だしの香り | 薄口 | 色と香りが穏やか。塩味は味見する |
| 青魚・肉の煮物 | 濃口寄り | しっかりした香りで包み、濃い色に仕上げやすい |
| 野菜の炊き合わせ | 薄口寄り | 野菜の色とだしを残しやすい |
| お吸い物・茶碗蒸し | 薄口寄り | 汁や卵の色を淡く保ちやすい |
| 炊き込みご飯 | どちらも可 | 淡いだし味なら薄口、香ばしい醤油味なら濃口 |
| 刺身・冷奴など卓上 | 濃口が一般的 | 薄口も使えるが、塩味と香りの違いが出る |


煮物なら必ず濃口、ではないのですね。色をつけたいのか、素材の色を残したいのかで分かれます。
煮物では濃口と薄口のどっち?
煮物の種類ではなく、色と香りの完成像で決めます。ぶり大根、さばの煮付け、角煮のように醤油色と香りをしっかり出したい料理は濃口が使いやすく、里芋の含め煮や若竹煮、野菜の炊き合わせなど素材の色を残したい料理は薄口が向きます。
肉じゃがやおでんは、地域や家庭で完成像が違います。茶色く甘辛い味を目指すなら濃口、だしを前に出した淡い仕上がりなら薄口、という選び方ができます。どちらか一方が正解というより、目指す一皿が違います。
お吸い物では薄口醤油が向く?
だしの色と香りを前に出したいお吸い物には、薄口が使いやすいです。ただし、色が淡いからと入れすぎると塩味が強くなります。まずだしを整え、薄口は少量ずつ加えて味を決めます。
濃口しかない場合も作れますが、汁の色と醤油の香りは強くなります。薄口がない場面で濃口・白だし・めんつゆのどれを選ぶかは、薄口醤油の代用を料理別に選ぶ方法で詳しく整理しています。
炊き込みご飯ではどちらを使う?
具材とだしの色を残すなら薄口、醤油の香ばしさと茶色い仕上がりを求めるなら濃口です。たけのこ、豆、きのこなど素材の色を見せたいときは薄口、鶏肉や油揚げを甘辛くまとめたいときは濃口がなじみやすいでしょう。
薄口は濃口より一般的な塩分が高めなので、同量を機械的に入れ替えず、レシピの想定と手元の商品の表示を確認します。
薄口醤油は卓上醤油として使える?
使えますが、濃口のような万能のつけ・かけ用とは性格が違います。濃口は日本醤油協会が調理用・卓上用の両方に幅広く使える種類と説明しています。薄口を刺身や冷奴へかけても問題はありませんが、色のわりに塩味を強く感じたり、期待する醤油の香りが穏やかに感じたりします。
卓上では少量から試し、料理との相性で決めます。濃口・たまり・再仕込など、つける用途に向く別の種類もあります。
関西ではなぜ薄口醤油が多い?
だしで素材を煮含め、醤油で仕上げる食文化と相性がよかったためです。日本醤油協会は、赤身魚の多い東日本では香りの高い濃口が普及し、関西ではだしを中心に素材を煮含める調理法の中で薄口が生まれ、普及したと説明しています。
ただし「関西料理なら必ず薄口」ではありません。現在も地域性はありますが、料理、家庭、商品によって使い分けは変わります。地域は手がかりの一つで、最終判断はレシピの指定と完成像を優先します。
レシピに「醤油」とだけあるときは?
一般的には濃口を想定しやすいものの、作者や媒体、地域、料理によって例外があります。日本醤油協会によると濃口は出荷量の約84%を占め、調理にも卓上にも広く使われる最も一般的な種類だからです。
「何も書いていない=絶対に濃口」とは決めず、種類指定、サイトの表記ルール、料理の色、完成写真の順で確認します。詳しい判断順は、レシピの「醤油」が濃口か薄口か迷ったときの判断基準でまとめています。
迷ったときは何を基準に選ぶ?
- 色:素材や汁の淡い色を残したいか
- 香り:醤油らしい香りを前に出したいか
- だし:醤油よりだしを主役にしたいか
- 塩分:手元の商品の食塩相当量はどのくらいか
- レシピ:種類の指定、作者の注記、完成写真があるか
濃口か薄口かは「味の濃さ」ではなく、色・香り・だしの優先順位で選ぶと迷いにくくなります。塩味の強さは、最後に商品表示と味見で調整します。
まとめ:料理で残したいものから選ぶ
濃口は醤油の色と香りを出しやすく、調理から卓上まで幅広く使えます。薄口は色と香りを抑え、素材やだしを生かしやすい一方、塩分は一般的に高めです。
醤油の存在感なら濃口、素材の色とだしなら薄口。煮物のように両方使える料理では、完成させたい色と香りから決めてください。

「薄口=薄味」ではなく、「淡い色とだしを残す醤油」。これなら料理で選べそうです。
この記事で確認した主な資料
- 農林水産省「日本農林規格 しょうゆ」:醤油の定義と5種類の分類を確認
- 日本醤油協会「醤油を大きく分ければ5種類」:出荷割合、塩分、用途を確認
- 日本醤油協会「醤油 その製法」:薄口醤油の製法とラベル表示を確認
- 日本醤油協会「種類Q&A」:東日本・関西など地域差を確認
- キッコーマン「さまざまなしょうゆ」:JASの色度と表示を確認

